終わらない物語を君へ

 コンビニを出て、手に持った袋をぎゅっと握りしめながら、みどりは部屋へ戻った。
 足取りは少し早く、でも頭の中はまだぐるぐるしている。

「……ただいま」
 思わず小さな声で呟く。

 蓮はソファに座ったまま、にこりと微笑む。
「おかえり、みどり」

 その自然な笑顔に、また胸がぎゅっと熱くなる。

「……ちょっと、買い物行ってきた」
 小声で説明しながらも、思わず顔が赤くなる。

「うん。ありがとう」
 蓮は柔らかく笑い、何も突っ込まない。
 その自然さに、みどりは少しほっとしつつも、恥ずかしさで胸がドキドキする。

「……じゃあ、まずお湯をためようか!」
 みどりは少し落ち着きを取り戻し、手早くお風呂の準備を始める。

「こうすればシャワーが出るから、これを使って頭を洗って……あ、体はこれで洗うんだよ」
 一通りの手順を説明しながら、みどりは蓮に指さして見せる。

「わかった!」
 蓮は目を輝かせ、真剣に頷く。

 シャワーの音が立ち上がり、しばらくして――

「みどりー?」
 少し戸惑った声で呼ばれる。

 振り向くと、そこには――
 服のままシャワーを浴びている蓮が立っていた。

「……えっ!?」
 思わず手が止まるみどり。
 そうか。小説の中では、入浴シーンなんて、なかったはずだ。

 蓮は楽しそうに笑い、肩にかかる水滴を気にせずに言う。
「これでいいのかな?」

 みどりは慌てて、手で顔を覆いながら言った。
「ち、違う違う! 服は脱いで――!」

 蓮は首をかしげながらも、純粋な好奇心で動作を見守る。
 ――この無邪気さ、想像以上に可愛い……!
 心臓がぎゅっと熱くなるみどり。

 水の音と、蓮のはにかんだ声が混ざり合い、部屋の中に不思議な時間が流れる。
 小説にはなかったハプニングに、みどりは思わず笑いをこらえられなかった。