終わらない物語をキミへ

 高校1年の夏。
 私は、女子5人組のグループの一員だった。

 放課後に寄るクレープ屋、プリクラ、恋バナ――
 「これが青春!」って、毎日がキラキラしてた。

 ……あの日までは。

 放課後、呼び出されて行った中庭。
 蝉の声がうるさいくらい響いていて、相手の顔もよく見えない。

「……好きです。付き合ってください!」

 いきなりの言葉に、頭が真っ白になった。
 目を凝らして見ると、彼は真剣な眼差しでこちらを見つめていた。今さっきまで練習していたことがわかる、所々土のついたサッカーのユニホーム。

 ――あ。この人、サッカー部のキャプテンで有名なイケメン。…そして、友達の好きな人。

「…なんで私?」
気づけば心の声が漏れていた。

「それは…」
「ごめんなさい。あなたを選ぶことはできません」
 彼が言いかけた言葉を遮るように、はっきりとした口調で伝えた。

 選択肢はそのひとつしかなかった。
 それでいいと思った。それがいいと思った。

 のこのことこんなところまで来るんじゃなかった。
 そう思いながら、背を向けて歩き出す。
 後ろで私を引き止める声が聞こえた。それでも、振り返らずに歩いた。その場から逃げ出していた。

 でも、その翌日、教室の空気が変わっていた。

 いつもの席に座っても、誰も話しかけてこない。
 笑い声は聞こえるのに、私の存在だけが消えていくみたい。

「色目使ったんでしょ?」
「前から愛想よかったもんね〜」
「しかも断るとか何様?ウケる」

 わざと聞こえるように、私に向かって笑いながら言ってきた。
 ――ねぇ、全部、聞こえてるってば。

 それでも、何も言い返せなかった。
 何を言っても、信じてもらえないような気がして。

 その時、当たり前だったものは、突然音もなく消えてしまった。

「……なんなのよ!どうしろって言うのよ!」

 いつもの帰り道で1人、私の声だけが響いた。

「わん!わんわん!」

 すれ違った犬を散歩させていたお兄さんが驚いた顔をして、こっちを見ていた。ヤバいやつを見る目だ。
 慌ててわんちゃんを黙らせようとしていた。

 心の中で、何かが“ぷつん”と切れる音がした。
 もう、恋愛なんていらない。友達もいらない。
 傷つくくらいなら、1人でいると誓ったんだ。