終わらない物語を君へ

 食事を終えた二人は、しばらく沈黙のまま余韻に浸る。
 みどりはふと立ち上がり、食器を片付けようと洗い場へ向かう。

「……蓮も手伝ってくれる?」
 そう聞くと、蓮はすぐに立ち上がって隣に並ぶ。

「もちろん。君と一緒にやるのは楽しそうだ」
 その言葉に、胸の奥がぎゅっと熱くなる。

 シンクの前で、二人の手が自然と近づく。
 水で食器を洗う手、泡を流す手――
 指先が触れそうで、触れない。
 そのわずかな距離に、みどりの心臓は早鐘のように跳ねる。

「……あのさ」
 蓮が小さな声で囁く。
 思わず手が止まる。

「……ん?」
 目だけで返すと、蓮は微笑みながら、そっとみどりの手の先に自分の手を添えた。

「こうやって触れ合うと、不思議と落ち着く」
 低く穏やかな声が、胸にじんわりと染みる。

「ちょ…ちょっと!離して!」
「なに、照れてるの?」

 お皿を洗うだけの、ただのいつもの家事なのに――
 目の前の彼と一緒にいるだけで、こんなにもときめいてしまうなんて。

 そのまま二人で食器を片付け、テーブルを拭き、コンロを整える。

 時折、肩や腕が触れるたび、心臓が跳ねて手元が少し震える。
 でも、それが心地よくて、胸の奥がほわっと温かくなる。