終わらない物語を君へ

 足取りはいつも通りのつもりなのに、妙に速い。

 ……落ち着け。

 ただパンを渡すだけだ。

 図書室へ向かう廊下を歩きながら、鞄の中の袋がやけに気になる。

 なんて渡す。

 「これ、余ったから」

 いや、数量限定なのに無理がある。

 「買いすぎた」

 メロンパン二個で買いすぎって何だ。

 「お前、昨日見てただろ」

 ……きもいな、それは。

 湊は小さく舌打ちした。

 なんでパン一個でこんなに悩んでんだ、俺。

 もう黙って置いて帰るか。

 いや、それはさすがにないだろ。

 図書室の扉が見えてくる。

 湊は一度立ち止まり、深く息を吐いた。

 ……普通でいい。

 普通に渡せ。

 そう決めたくせに、心臓の音だけは全然普通じゃなかった。

 ただ、少しでいい。
 一瞬でもいいから。

  あいつの、嬉しそうな顔が見てみたい。