終わらない物語を君へ

「たまたまって…これ、20個限定だよ!?」

「……うるせぇ」 

 湊が恥ずかしそうに俯いたのが見えた。
 みどりはメロンパンの袋を指先でつまんで、そっと息をついた。

「ありがとう」

 いつか食べたいと思っていたメロンパンに、こんな形で巡り会えるなんて。思わず顔が綻んだ。

 湊は聞こえたのか、聞こえなかったのか、何も言わずにペンを差し出してきた。

 「ほら。ここってこれ?」

 湊が指したのは、ノートの端。

 みどりは一度深呼吸して、椅子を少し引いた。

 「違う。そうじゃなくて……」

 自分のペンを取り、問題文の一行をなぞる。

 「この条件、先に使うの」

 淡々と説明する声。
 距離も、言葉も、必要以上に縮めない。

 「ふーん」

 湊は身を乗り出して、ノートを覗き込んだ。

 さっきより、少し近い。

 「だから、これになる」

 みどりは気づかないふりをして、書き進める。

 「へえ。そうやるんだ」

 感心したように言うけれど、肘をついたまま、その視線はノートより、みどりの方を見ていた。

 「……わかったなら、次やって」

 視線を上げずに言うと、

 「冷たいな」

 湊は軽く笑った。

 「だって、勉強、教えるだけだから」

 きっぱり言うと、湊は一瞬だけ黙る。

 それから、少しだけ肩をすくめて、ペンを持ち直した。