終わらない物語を君へ

 図書室に着くと、入口近くの席で、湊が腕を組んで待っていた。

 「遅い」

 開口一番、それだけ。

 「来るなんて言ってないでしょ」

 息を整えながら、みどりは言い返す。

 すると湊は、当然みたいな顔で言った。

 「でも、来ただろ」

 その一言に、言葉が詰まる。

 何か大事な話かと思ったのに。

 湊はノートを机に広げた。

 「試験近いから。これ、教えて」

 拍子抜けするほど、軽い理由。

 「……それだけ?」

 「それだけ」

 そう言って、湊はカバンから何かを取り出す。

 机の上に置かれたのは、人気でいつも売り切れてしまうメロンパンだった。

 「これやる」

 「え!!なんで!?」

 「……うまいから」

 それだけ言って、湊は視線をノートに落とす。

 理由になっているようで、なっていない。

 「たまたま買えたから。それだけ」

 ページをめくりながら、ぼそっと付け足す。

 何でもないふりをした横顔が、少しだけ近く感じる。