終わらない物語を君へ

「私は恋愛とか、そういうのなしだから。蓮は私の憧れだけど、それ以上でも以下でもない」

  自分で言って、なぜか胸がズキンと痛んだ気がした。

「湊はそういうのじゃないし」

「へぇ」

 結衣は意味ありげに相づちを打つが、にやにやが、止まらない様子だった。

 そのときだった。

「ねぇ、みどり!」

 明るい声が、休憩室に響く。

 振り返ると、蓮が少し早足で近づいてくる。

 表情は、やけに晴れやかだった。

「やっと給料日なんだ」

 拳を軽く握って言う。

「ケータイ、買える!」

 一瞬、結衣が固まってから、噴き出す。

「……え」

「蓮さんって」

 笑いを堪えきれない様子で続ける。

「今まで、ケータイ持ったことないんですか?」

「うん」

 蓮は何でもないことみたいに頷く。

「必要なかったから」

「そんな人、いるんだ……」

 結衣は呆然としながらも、どこか楽しそうだった。

 みどりは、思わず小さく笑ってしまう。

 ——この人は、本当に。

 いるだけで、場の空気を変えてしまう。