終わらない物語を君へ

 俺がみどりを初めて見たのは、始業式の日だった。

 図書室の窓から、本を読んでいる姿が見えた。
 背筋を伸ばして、静かにページをめくるその横顔は、凛としていて綺麗で、どこか人を寄せつけない空気をまとっていた。

 気づけば、その日から彼女を目で追うようになっていた。

 誰とも話さない。
 話しかけられても、必要最低限の言葉しか返さない。

「美人だけど、愛想ないよね」

 そんな声が、通りすがりに聞こえてくる。

 ——ああ、分かる。

 胸の奥で、勝手にそう思った。

 俺も、そうやって見られてきたから。

 近づかれないようにしているわけじゃない。
 ただ、近づく理由が分からないだけ。

 傷つかない距離を、無意識に選んでいるだけ。

 みどりは、たぶん、俺と同じ。

 だから、あえて声をかけようとは思わなかった。

 無理に踏み込まれたくない気持ちも、踏み込まれるときの怖さも、分かっていたから。

 それでも。

 図書室の窓越しに見る彼女は、
 いつもひとりで、静かで、どこか寂しそうで。

 目を逸らせなかった。

——守りたい、なんて感情じゃない。

 ただ、同じ場所に立っている人間がいることを、勝手に、嬉しく思っていただけだ。

その気持ちが何なのか。
そのときの俺は、まだ知らなかった。