「サンチェスさん！旦那様のトラップ完了しましたっ！」
「よくやった。」

　マーシャは柱の影に隠れていた執事のサンチェスのところへ駆け寄った。すると、反対側から騎士の格好をした男性が足音を消して近づいてきた。

「カイト、旦那様は？」
「もうすぐ戻られます。私が促さなくてもご自身で帰ると言い出して……はは、こんなこと初めてです。あの方が噂の結婚相手ですか？」
「アリシア様よ。お綺麗でしょう？」

「クロード様があんなことになるのも頷けます。では、私は次の任務に戻ります。後でどんな感じだったか教えてください。」
「ありがとう、カイト。くれぐれもバレるなよ？」
「了解です！」

　カイトが静かに戻っていくと、サンチェスとマーシャのところへ使用人たちがわらわらと集まってきた。

「静かに！みんな、気配を消して！」

　使用人たちは、柱の影に隠れて悪魔と呼ばれるヴェルシュタールの辺境伯クロードの帰りを待った。