「ようこそお越しくださいました!」
(ひいっ!)
ずらりと並んだ使用人たちは一斉に頭を下げた。まるで自分がこのお屋敷の主人になったみたいだ。私は慌てて馬を降りた。
「ようこそヴェルシュタールへ!」
「馬はこちらでお預かりしま〜す。」
「お荷物は私が。」
使用人たちはテキパキと馬を連れて行き、荷物を持ち、ローブを預かってくれた。
「では、中へどうぞ〜!」
あれよあれよと言う間にお屋敷の中に連れて行かれて、長い廊下を進んだ。外から見たら要塞のようだったけど、中はアンティークな作りの洋館だった。
(すごいなぁ、お城みたい……)
窓が少ないから太陽の光は入って来ないけど、煌びやかなシャンデリアが廊下を明るく照らしている。
「こちらが奥様のお部屋です!」
「おっ、奥様!?」
使用人たちは楽しそうに微笑んでいる。悪気はなさそうだ。
(手紙に結婚するようにって書かれていたから、そんな風に呼ぶんだよね……)
とはいえ、なんかむずむずする。困惑していると、扉が開いて部屋の中からメイドが現れた。
「はじめまして、奥様!奥様のお世話を担当いたしますマーシャです!よろしくお願いします!」
「あ、あの、マーシャさん……」
「マーシャとお呼びください、奥様。」
「あ、えっと……マーシャ、まだ結婚していないので、名前で呼んでください。なんか変な感じがするから……あはは。」
「かしこまりました、アリシア様!」
(アリシア様!?……奥様よりはマシ……なのかな……)
マーシャに促されて、私は部屋の中へ足を踏み入れた。
「わ……」
こんなに広い部屋は見たこともない。ベッドや調度品も触れることが憚れるほど煌びやかだ。
「ご不満がございましたら、何なりとお申し付けくださいっ!」
(部屋が広すぎることと、豪華すぎることが不満かもしれないわ……)
「ではアリシア様、お風呂に入りましょう〜!」
私は着ているものを見下ろした。宿屋でシャワーは浴びたけど、3日間同じ服でひたすら馬を走らせて来た。とても結婚するために来たとは思えない。
「ごめんなさい、こんな格好で来てしまって……」
「この後、いろいろありますから。ふふ。」
マーシャの怪しげな笑みの意味はよくわからないけど、お風呂に入れるのはありがたい。私は遠慮なくお風呂に入った。だけど、当然お風呂も広くて豪華。私は終始キョロキョロしていた。
(落ち着かない……)
ソワソワしながら入ったけど、全身はピカピカになった。石鹸とかシャンプーがとんでもなく良いものなのだろう。
「わあ!やっぱりすごくお綺麗ですね!」
「なっ、何!?急に……!」
「ふふふ。可愛い〜!お顔が真っ赤です。」
褒められることには慣れていない。突然そんなこと言われれば誰だって驚くし照れる。
「お着替えはこちらです!」
部屋の真ん中に、ででんとドレスを着たトルソーが立っている。
「これから結婚式でもするの?」
「これはアリシア様の私服ですよ。し・ふ・く♪」
「!?」
毎日こんなフリフリのゴテゴテしたドレスで過ごせというのか。
「あの……言いにくいんだけど、私、貧乏だったの。だから貴族の生活はしていなくて……こんなドレスを着て生活するのは、ちょっと難しいというか……」
恥ずかしい告白ではあるけれど、知ってもらっておいた方が良い。
「今日くらいは着てみませんか?ヴェルシュタールへいらした記念です!」
(ヴェルシュタールへ来た記念か……そういうことならいいかな……二度と着られないかもしれないもんね。)
慣れてないけれど、嫌というわけではない。着てみたいと思っていたし、このドレスはすごく可愛い。
「じゃ、今日くらいは……」
マーシャに手伝ってもらってドレスに着替えると、思った以上にテンションが上がった。結婚式に憧れる女性たちの気持ちがよくわかる。
「お似合いですよ、アリシア様!」
「ふふふ、ありがとう。なんか楽しいわ。」
「毎日お召しになってもかまいませんからね。たくさんご用意しております!」
(ドレスがたくさんあるんだ……さすが辺境伯様……)
「では、こちらへおかけください。」
鏡の前に座ると、マーシャの手によってどこぞのお姫様のように変わっていった。メイクも髪型もこんな風にしたのは初めてだし、キラキラしたアクセサリーはじっと見ていても飽きない。
「すごいわね……こんな風になるなんて……」
「アリシア様の素材を活かしただけです。ふふふ。」
私は嬉しくなって鏡の中の自分をじっと見つめた。
「旦那様がお戻りになるまで、いかがなさいますか?」
「辺境伯様は戦いに出られているの?」
「本日は偵察に出ています。」
(侵攻を受けていなくても、常に警戒しているということよね……気が抜けないわね……)
「帰って来るの?」
「今日はアリシア様がいらしているので、戻って来ると思います。」
「普段は帰って来ないってこと?」
「アリシア様がいらっしゃれば、帰って来るようになると思いますよ。」
(なんか迷惑をかけてるみたい……)
お客さんが来てるから帰るみたいな感じで、わざわざ戻ってくるということだろうか。偵察を中断してまで応対してもらう必要はない。辺境伯様に会ったら伝えよう。
(ひいっ!)
ずらりと並んだ使用人たちは一斉に頭を下げた。まるで自分がこのお屋敷の主人になったみたいだ。私は慌てて馬を降りた。
「ようこそヴェルシュタールへ!」
「馬はこちらでお預かりしま〜す。」
「お荷物は私が。」
使用人たちはテキパキと馬を連れて行き、荷物を持ち、ローブを預かってくれた。
「では、中へどうぞ〜!」
あれよあれよと言う間にお屋敷の中に連れて行かれて、長い廊下を進んだ。外から見たら要塞のようだったけど、中はアンティークな作りの洋館だった。
(すごいなぁ、お城みたい……)
窓が少ないから太陽の光は入って来ないけど、煌びやかなシャンデリアが廊下を明るく照らしている。
「こちらが奥様のお部屋です!」
「おっ、奥様!?」
使用人たちは楽しそうに微笑んでいる。悪気はなさそうだ。
(手紙に結婚するようにって書かれていたから、そんな風に呼ぶんだよね……)
とはいえ、なんかむずむずする。困惑していると、扉が開いて部屋の中からメイドが現れた。
「はじめまして、奥様!奥様のお世話を担当いたしますマーシャです!よろしくお願いします!」
「あ、あの、マーシャさん……」
「マーシャとお呼びください、奥様。」
「あ、えっと……マーシャ、まだ結婚していないので、名前で呼んでください。なんか変な感じがするから……あはは。」
「かしこまりました、アリシア様!」
(アリシア様!?……奥様よりはマシ……なのかな……)
マーシャに促されて、私は部屋の中へ足を踏み入れた。
「わ……」
こんなに広い部屋は見たこともない。ベッドや調度品も触れることが憚れるほど煌びやかだ。
「ご不満がございましたら、何なりとお申し付けくださいっ!」
(部屋が広すぎることと、豪華すぎることが不満かもしれないわ……)
「ではアリシア様、お風呂に入りましょう〜!」
私は着ているものを見下ろした。宿屋でシャワーは浴びたけど、3日間同じ服でひたすら馬を走らせて来た。とても結婚するために来たとは思えない。
「ごめんなさい、こんな格好で来てしまって……」
「この後、いろいろありますから。ふふ。」
マーシャの怪しげな笑みの意味はよくわからないけど、お風呂に入れるのはありがたい。私は遠慮なくお風呂に入った。だけど、当然お風呂も広くて豪華。私は終始キョロキョロしていた。
(落ち着かない……)
ソワソワしながら入ったけど、全身はピカピカになった。石鹸とかシャンプーがとんでもなく良いものなのだろう。
「わあ!やっぱりすごくお綺麗ですね!」
「なっ、何!?急に……!」
「ふふふ。可愛い〜!お顔が真っ赤です。」
褒められることには慣れていない。突然そんなこと言われれば誰だって驚くし照れる。
「お着替えはこちらです!」
部屋の真ん中に、ででんとドレスを着たトルソーが立っている。
「これから結婚式でもするの?」
「これはアリシア様の私服ですよ。し・ふ・く♪」
「!?」
毎日こんなフリフリのゴテゴテしたドレスで過ごせというのか。
「あの……言いにくいんだけど、私、貧乏だったの。だから貴族の生活はしていなくて……こんなドレスを着て生活するのは、ちょっと難しいというか……」
恥ずかしい告白ではあるけれど、知ってもらっておいた方が良い。
「今日くらいは着てみませんか?ヴェルシュタールへいらした記念です!」
(ヴェルシュタールへ来た記念か……そういうことならいいかな……二度と着られないかもしれないもんね。)
慣れてないけれど、嫌というわけではない。着てみたいと思っていたし、このドレスはすごく可愛い。
「じゃ、今日くらいは……」
マーシャに手伝ってもらってドレスに着替えると、思った以上にテンションが上がった。結婚式に憧れる女性たちの気持ちがよくわかる。
「お似合いですよ、アリシア様!」
「ふふふ、ありがとう。なんか楽しいわ。」
「毎日お召しになってもかまいませんからね。たくさんご用意しております!」
(ドレスがたくさんあるんだ……さすが辺境伯様……)
「では、こちらへおかけください。」
鏡の前に座ると、マーシャの手によってどこぞのお姫様のように変わっていった。メイクも髪型もこんな風にしたのは初めてだし、キラキラしたアクセサリーはじっと見ていても飽きない。
「すごいわね……こんな風になるなんて……」
「アリシア様の素材を活かしただけです。ふふふ。」
私は嬉しくなって鏡の中の自分をじっと見つめた。
「旦那様がお戻りになるまで、いかがなさいますか?」
「辺境伯様は戦いに出られているの?」
「本日は偵察に出ています。」
(侵攻を受けていなくても、常に警戒しているということよね……気が抜けないわね……)
「帰って来るの?」
「今日はアリシア様がいらしているので、戻って来ると思います。」
「普段は帰って来ないってこと?」
「アリシア様がいらっしゃれば、帰って来るようになると思いますよ。」
(なんか迷惑をかけてるみたい……)
お客さんが来てるから帰るみたいな感じで、わざわざ戻ってくるということだろうか。偵察を中断してまで応対してもらう必要はない。辺境伯様に会ったら伝えよう。



