「違う。お前がどこにいようと勝手に目が行くんだ」


「・・・え?」


だからそれって、監視対象だからって意味じゃ。


「目を逸らしたら、居なくなりそうでな」


・・・海でのやり取りがまだ引っ掛かってるのか?


別に私が居なくなったところで何が起きるってんだよ。強いていえば西の情報が得られない事ぐらいだろ。


それ程までに西について知りたいというのだろうか。


聞こうにも皇の瞳があまりにもまっすぐで、言葉が喉でつかえる。


「・・・あんた、どういう」


「・・・やっぱりお前には遠回りは効かないようだからな。これからは直接伝えていく」


訳の分からない言葉ばかりを並べるこいつに私の顔は歪む一方だ。


なんとか言い返そうにも何がこいつに刺さるんだよ。





「お〜い!」


睨む私と微動だにしない皇という構図に周りが距離をとる中谷垣がこちらにやってくる。


『谷垣選手!まさかの2位でゴールです!』


・・・まじかよ。


驚いて先程までの怒りはどこかへ飛んで行ってしまった。


いやいや、よくあったな六法全書!?


「篠宮さんが貸してくれて良かったよ」


しかも持ってたの篠宮さんかよ。


なんで持ってるんですかあんた。


谷垣を労りながら皆の待つ場所へと向かう。





『これから直接伝えていく』


その言葉に、私が、"変な解釈"をしてしまわないよう、自分の中で生まれたざらりとした熱を抑えながら。