私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

前に体を動かす事だけを考えてゴールテープだけを視界に映す。


残り半分という所でスタートからピッタリとついてくる気配を離すためにさらに力を込めた。





「はぁっ、はぁ」


『C組の綾波 ましろ選手!注目が集まる中堂々と1位でゴールですっ!』


歓声がうるさい。


にしても疲れた・・・。


久しぶりにこんな走ったからか息も乱れずに、というのは難しかったか。


『いやぁ〜、陸上部部長の佐倉選手も惜しかったですね』


ああ、すぐ近くに居たの陸上部だったのか・・・。


気を抜いたら負けてたな。


「綾波さん!」


噂をすればなんとやら、佐倉と呼ばれた男が近寄る。


「とてもいい走りだった!」


「どうも・・・」


「どうだろう君も陸上部に入らないか?夕日に向かって走り、体を絞ろうじゃないか!」


なんなんだこの暑苦しい人種は。


悪いが夕日に向かって走る事に魅力を見いだせない人種なんだこっちは。


「丁重にお断りします」


返事だけを残して皆の元へと戻る。


変な奴に絡まれてしまった・・・。


「おかえり〜!!皆1位おめでとう!」


「ただいま」


ここは楽園か?天使はここに実在していた。


引き寄せられるように再度抱きしめる。


「うおっ、どうしたのましろちゃん?」


「癒しが必要なだけ」


「そういやなんか話し掛けられてなかったか?」


「あー、陸上部の部長?」