「それでは参加したい種目があれば名前を書きに来てください」


爽やかな委員長の声。


しかしクラスの人間は誰一人立とうとしない。


私とは違い興味がないなどといった雰囲気ではないものの、周りの顔色を伺っている、そんな様子だ。


「優里は?パン食い競走とかあるみたいだけど」


他の学校は知らないがうちの体育祭では走るレーンにパンが吊るされている箇所が何個かあり、それらを全て食べてゴールしないといけないらしい。


この子はそういったものに目が無いと思ってたけど・・・。


「参加したいよ!?けどね、」


恐る恐る聞けば優里は体育祭について説明してくれた。


まとめるとこうだ。


行事に積極的に取り組んで貰うべく体育祭と文化祭には優勝賞品なるものがあるらしい。


体育祭の賞品は優勝した色の学年それぞれに、年明けにある修学旅行の行先の決定権をくれるそう。


要するに勝たなければいけないという空気ができており好きな種目を選ぶ。まではいいがそれによって負けてしまった場合が怖い、と。


勝ち負けを気にせず好きな物に参加すればいいとは思うが集団の中ではそう簡単に割り切れるものではないのだろう。


「はは、まぁこうなるよね」


委員長も想像はできていた事のようで教卓から二つの箱を取り出す。