「この部屋を使って」
「分かった」
自宅に戻り空いている部屋を案内する。
授業終わりに東の人間に皐月を紹介したり(もちろん西の大罪人ということは今は伏せて)、買い出しに行ったりとですっかり暗くなってしまった。
ちなみに水嶋は台所で夕飯の支度をしてくれている。この子が食べる方だと伝えれば張り切っていたな。
「ご主人様はあいつらの事気に入ってるんだね」
「・・・ええ」
すぐに下りるからと月明かりだけが照らす部屋。換気がてら窓を開けていたため視界を確保するにはそれだけで十分だった。
荷物を机に置く皐月をベッドに腰掛け眺めていればそんな事を問われる。
そんなに分かりやすかっただろうか?いいや、長い付き合いである皐月だからすぐに見抜かれてしまったんだろう。
じゃなきゃ初対面である皆に噛み付いたりしない。喧嘩っ早い性格ではあるものの、この子の優先順位は兄や私、そして食べ物と可愛いもの。喧嘩はその次だ。
食べる事を中断してまで喧嘩を売るような事は普段であればないのだ。
「そういう事なら何も言わない。けど、そのせいで"やりたい事"できてないんじゃない?」
ここに来るまでに調べあげてきたのか・・・。
身内の成長というのは何とも考え深いものがある。


