「え"」


優里から聞いた事もないような低い声がしたけど気のせいだろうか。


渋い顔をして私より可愛いのに?とショックを受けているように見えるけどやはり気のせいかもしれない。


そういえば知るタイミングはなかったなと思い出す。


ハニーブラウンの髪を靡かせ華奢な体と可愛らしい顔をしてるが皐月は正真正銘の男だ。


制服をアレンジしてしまう程に可愛いものが好きなだけのな。


私は見慣れてしまったが言われないと分からないという気持ちは十分に理解できる。


それにしても瑠璃川はよく気付いたな。いや、女嫌いの瑠璃川だからこそ気付いたんだろうか。




「意味分かんない!僕が男だからって何?というかさっきから思ってたけど君さぁ、僕とキャラ被ってない?可愛い男の子とかそんな属性僕一人で十分なんだけど」


「お前何言ってんだ!俺知ってるぞ、そーゆーのいちゃもんって言うんだ!」


「何その中身のない返答。ご主人様!こんな奴らと絡んでてもいい事ないよ!」


「んだと!」


「なにさ!」


これ以上は良くないと私が皐月を、谷垣が瑠璃川を引き剥がし落ち着かせる。


「ごめんなさいねうちの子が」


「いいやこっちもごめん。文、口が悪いぞ」


思えば皐月の周りにはこのように感情をぶつけられるような相手はいなかったからな。本人もどう止めればいいのか分かっていなかったのだと思う。


懐いてたのも兄と私だけだったしな。


場違いな考えではあるんだろうがそんな存在がこの子にできて微笑ましく思う。歳は変わらないが弟のような存在だから。