私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「へ、」


何が、起きた?


行きたくないと悲鳴をあげる足をなんとか前に運ぶ。窓へ向かう度に息は荒くなって胸が痛い。


だけど、かーさんがこの向こうに行っちゃったから。


目の前で消えちゃったから。


探さないと。


そう言い聞かせて窓から乗り出し外の様子を確認する。


見たくないと警報が鳴るけど、それと同じくらい心音が煩いけど、探さないと。





「〜っ!」


下には体の至るところが折れ曲がって見たことない何かが零れてしまっている"かーさんだったもの"が横になっていた。


赤い水たまりは徐々に広がっていって急いで窓から離れて胸元を抑える。


「はぁっ、はぁっッうあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」


「文!」


「うあ"あ"あ"ッ、かーさん!かーさんが!!!」


誰かに優しく抱きしめられている事にも気付かずおれは叫び続けた。


その腕から逃れようと殴るようにして暴れてたから相手は痛かったはず。


「文!文!しっかりしろ!」


胸ぐらを掴まれておれはやっとその相手を認識する事ができた。


「りゅー、じ・・・」


「そうだ俺だ。大丈夫、大丈夫だからっ!」


力いっぱいに抱き締めて背中をさすってくれる龍二の優しさに甘えて泣きじゃくりながらおれも抱き締め返す。


「これは酷い・・・、君達私の部屋で待ってなさい」


龍二と一緒に来てくれたらしい大家さんがおれを抱えて家を出る。