私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「そうか、それは嬉しいな」


「おう!」


学校からの帰り道を龍二と歩く。朔夜は家の迎えがあるし、他の皆は途中で別れるから最後の方はこうなるんだ。


「それじゃまた明日な」


「また明日!気を付けて帰れよー!」


階段を上る途中で腕を振ってさよならをする。本当は踊り場で振りたかったけど背が小さ過ぎて隠れちゃうしな。


朔夜達はどんどん背が伸びてきてるし羨ましいな・・・。


団地の5階に家があるからふとした瞬間に外を見ると怖いなって思うことがあるし。


大人になって背が高くなったらそう思うこともないのかな。女子から可愛いって言われることも。





「ただいまかーさん」


いつものようにリビングにいたかーさんの背中に声を掛ける。


返事は返ってこなかった。


いいんだ、朝おはようって言ってくれただけでも嬉しいし少しずつ会話が増えてくれたら。


ランドセルを下ろして宿題をしようと台所へ向かう。


「ねぇ」


「!」


その声に勢いよく振り返る。


その顔は長い前髪で隠れてて表情はこっちからじゃ分かんないけどおれに声を掛けてくれたことが嬉しくて。


「なにかーさん」


「どこ行ってたの」


「どこって、学校だよ?」


変な事を聞くなって思いながらも返事をする。


こんな会話もできるようになったなんて。やっと、おれのこと見てくれたんだ。