葬式が終わってしばらくしておれたちは住んでいた家に戻った。
大人達の監視は必要じゃないかっていう声もあったけど、皆の心配を他所にかーさんは落ち着いていた。
その様子に周りもやっと諦めがついたのかと判断したみたい。
とーさんはもういないけど、また昔みたいに過ごせる日が来るかもしれない。そんな淡い期待をおれも抱いていた。
それから数年。
高学年になったある日。
「行ってくるねかーさん」
いつものようにリビングに居るはずのかーさんに向かって声を掛ける。
ドアを開けようとドアノブに手をかけた時、リビングからこちらへ向かってくる足音がする。
まさか、
「・・・行ってらっしゃい」
そこにはにっこりと微笑む母親の姿。
「!」
はじめて聞いた挨拶。
はじめて見た笑顔。
それだけでどうしようもなく嬉しい。
皆に報告しようと走って待ち合わせ場所まで行く。
はじめておれの事見てくれた!
前へと進む足は徐々に早くなって行く。
浮かれていたおれは知らなかったんだ。
閉じた玄関を見て、
「・・・ひさくんが戻ってきた」
そう呟いた事を。
大人達の監視は必要じゃないかっていう声もあったけど、皆の心配を他所にかーさんは落ち着いていた。
その様子に周りもやっと諦めがついたのかと判断したみたい。
とーさんはもういないけど、また昔みたいに過ごせる日が来るかもしれない。そんな淡い期待をおれも抱いていた。
それから数年。
高学年になったある日。
「行ってくるねかーさん」
いつものようにリビングに居るはずのかーさんに向かって声を掛ける。
ドアを開けようとドアノブに手をかけた時、リビングからこちらへ向かってくる足音がする。
まさか、
「・・・行ってらっしゃい」
そこにはにっこりと微笑む母親の姿。
「!」
はじめて聞いた挨拶。
はじめて見た笑顔。
それだけでどうしようもなく嬉しい。
皆に報告しようと走って待ち合わせ場所まで行く。
はじめておれの事見てくれた!
前へと進む足は徐々に早くなって行く。
浮かれていたおれは知らなかったんだ。
閉じた玄関を見て、
「・・・ひさくんが戻ってきた」
そう呟いた事を。


