「おい聞いてんのかよ!?」


怒鳴りつけるしか能のない単細胞共に顔を向ける。


「あー?綺麗な顔してんじゃねえか。遊びたいならそう言えよな」


ナイフが私の輪郭を撫でるように添えられる。武器があるだけで自分が優位に立っていると勘違いするやつっているよな。目の前の男はそれに分類されるらしい。


「あっ、お、おい!」


「なんだよォ?」


「こ、こいつ!この赤い目!」


もう一人が私の顔を見ながら青ざめる。


「こいつはヤバいッッ!!!!」





こっちの方は私の事知ってるんだ・・・。


そっとお面を被って近づく。


「何言ってん、だ─────────、」


「ひぃッ!」


ナイフを持つ手を叩き落とし顎に拳を入れる。それだけで男は気絶してしまったようで音を立てて転がったナイフを拾い上げる。


浴衣着てるせいで蹴りは使えないからな。


早々に片付けてしまおう。


尻もちをついた男に顔を向ければ歯をガタガタと鳴らし涙を浮かべる始末。


「酷いじゃないか人の顔を見て・・・。最近東に出入りしてるのお前らだろ」


ここ数ヶ月は見てなかったというのに。やはり夏は虫が湧く時期なんだな。


「な、なんで"アナタ"がここにッ!お、お願いします!止めてくださいッっ、」


男の言葉に首を傾げ、先程この男がしていたように頬にナイフを当てる。





「お前はそう言って止めたことはあるのか?」





「〜っ!」


男はみっともなく転がり路地裏の奥へと逃げる。