息をするのもやっとと言いたげな自分の身体に苛立ちを覚えながら深く息を吸う。


思い出さずに済むかな、


なんて淡い期待は無意味だったらしい。


「できるわけないんだ」


作りもしない自分の声に優里には聞かせられないなと失笑し持っていたべっこう飴を噛み砕く。








「─────、─────!」


「─────っ、───!!」


人混みの音で聞き取れないような小さな声。


あれは・・・。


無視すればいいものの眉をひそめそちらに顔を向ける。


数秒考え声のする路地へと足を進める。


足を進めるごとに下駄がからんと鳴るもののお相手方は目の前の事に夢中で気付いていないようだ。


「はっは!よえ〜ッ!!東の奴らはこうも平和ボケしてんのかよォッ!!」


品の欠けらも無い二人組が壁にもたれかかってぐったりしている男を揺さぶりバタフライナイフで頬を叩く。


「おうおう、このまま祭りで騒いだらどうなるんだろうなァッ!?」





「────もうその辺にしたら?」





「ああ"?誰だオメー」


私の声でようやく気付いた二人組は顔を歪めながら振り返る。


揺さぶられていた男に見覚えはないから東のメンバーである可能性は低いかな。


祭りに遊びに来た一般人といったところか。あいつらには特に連絡する必要もないだろう。