狐のお面・・・。


「祭りに来た記念にどうよ」


「・・・おじさん商売上手ね。これ貰うわ」


「お!毎度あり!」


お面を受け取りせっかくのお団子が崩れないように顔の横に持ってくる。うん、これなら問題ないだろう。


まだ金魚救いを続けるこいつらの元へ戻る。


「そういうの好んで買うやつだったか?」


「店主の口車に乗せられただけよ。私ここに来てべっこう飴しか買ってないんだもの何か記念に、ね」


「そうか・・・。綾波ならこっちの方が似合うと思うんだが」


皇が視線を向ける先を見れば黒い兎のキャラクターもののお面。確かに兎は可愛らしくて好きだが、こいつから私はどう見えてるんだ・・・?





あれからどれだけの時間が経ったのだろう。


会場に着いた頃と比べ更に人が増えたと思う。証拠に移動するのもやっとだ。


「花火の時間が近いからなっ」


会話をするのも声を張らないとまともに通じない。


人混みを掻き分けるも一人、また一人と見失ってしまう。数分もすれば列の外に出されてしまって完全に皆とは離れてしまう。


綺麗に離されたなぁ。


慌てることも無く人影の少ない方へ移動し連絡を取ろうとする。


しかしまだ人混みに流されてる人もいるようで既読はまちまちだ。


(落ち着いてから合流するのがいいだろう)


ため息を吐き出し人混みではなく夜空を見つめる。


こうなってくれた方が良かったかもしれんな。