ぼんやりと昔の事を思い出していた。
『私も、───ううん。"俺"も、この喋り方にする』
小さな世界が全てだった私に外の事を教えてくれる赤髪の少年。
それは今日も変わらない日常だった。
そんな日常の中突如として謎の宣言をする私に珍しく驚いた表情をする。
『は?なんで』
『俺も、--みたいに強くなりたいから?』
そう、強くなりたいんだ。
だって、強くなきゃ何も守れないだろ?
俺はもう、これ以上傷つきたくない。
こんな弱い自分を変えたいんだ。
さっきまで一緒に読んでいた絵本に描かれた勇者にぎこちない手で触れる。
竜に拐われたお姫様を勇者が救出するというなんとも王道なお話だが、幼い私には輝いて見えていたのだ。
『ふーん、いいんじゃね?形から入るのも』
上手く説明できない私に、不満の一つも零さず大好きな太陽のように輝く笑顔を浮かべてくれる少年。
ずっとこの瞬間が続けばいいのに。
無垢な私はそう願い、何も知らない無知な私にさよならをした。
この先過酷な未来が待っている事も、
また俺が「私」と偽る時が来る事も、想像なんてできずに。


