私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「大丈夫だよ。ましろちゃん言ってたもん『こっちの方が得意だから』って」


「ご主人様が言ってたの?」


「うん。理事長がドレスと一緒に用意してくれてたみたい」


「ヒメが・・・。そっか、久しぶりに聴けるんだ」


「何の話かよく分かんねーけど、綾波がそう言ったんなら大丈夫だな!」


舞台袖で何かがあったのか自信に満ち溢れた優里さんの言葉に安心する二人。


かく言う私も彼女がそう言うのであれば解決策があるのだろうと確証も無いはずなのに信頼してしまう。


まるで朔夜や輝久さんの言葉みたいに。





「あ!ましろちゃんだよ!」


最後に登場したというのもあり館内すべての視線を集めた彼女は堂々とした立ち振る舞いで、その手に持つ"ヴァイオリン"を静かに弾き始めた。


─────これはヴィバルディの四季の冬?


一音一音切るのではなくギリギリまで伸ばす不思議で妖艶な音色は、先日のピアノ演奏よりも自信を感じさせる。選曲も強かな彼女にはぴったりだと思う。


なるほど、先程の会話はこういうことですか。


まさかこんな特技もあったとは。彼女には驚かされてばかりです。


「・・・ご主人様綺麗。あの髪やったのあんた?」