私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

『ふわぁ〜、よく寝たわ。皆起こしてくれてありがとう』


そこには、影に向けて微笑みを浮かべるドレス姿の綾波がいた。





『・・・雪のように白い肌、黒檀のように黒く艶やかな美しい髪、彼女こそが世界で一番美しい者なのです』


鏡役の台詞にはその通りだと頷く事しか出来なかった。


綾波はいつも困ったように眉を下げて控えめに笑う。だからその微笑みは演技だ。優里や薺さんに剥ける笑顔とも違うんだから。そんなの、分かってるのに。


今の綾波は、怖いくらいに綺麗だ。


このシーンでは綾波以外生きているものは無いはずなのに、綾波の動き一つ一つに何故か説得力があって実際に森の中の出来事かと錯覚してしまいそう。


「・・・綺麗」


「朔夜さん達目的で来たけどさ、いいもん見れたな」


「あれ、綾波さんだよな?」


周りもきっとそう。綾波が現れてから誰一人舞台上から視線を逸らせないでいる。


綾波はいつも面倒、目立ちたくない、そんな言葉ばかり言うけど、あいつがその気になれば大勢の注目を集めることなんて簡単なんだろうな。


目が離せないまま物語はどんどん進み、老婆に化けた継母が現れる。