私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「俺は雇っていた家政婦さんが辞めちゃったからって・・・」


自分の事を含めてさっきから駒、駒、って・・・。


「それだけ?」


「それだけだよ」


「弟くんの治療費を負担してでも?あんな大金なのに?」


チッ、そこまで調べがついてるのかよ。


結局こいつは何が言いたいんだ。


「ましろは貸し借りを嫌う。・・・あんたらがあいつをどう見てるか知らないけど良いように使われているって自覚は持った方がいいんじゃないかな。





あいつは、"人を騙して誑し込むのが上手いよ"?」


「騙すって・・・、ましろんは嘘がつけないし」


「はは、君は嘘が付けなくても人を騙す方法なんていくらでもある事を頭に入れておくといいよ。かく言う俺だって騙されっぱなしなんだろうけどさ」


その言葉に俺は何も言えなくなった。


実際ましろんは隠し事が上手いし、俺達の知るあの子の事なんてこれっぽっちにも満たないだろう。


精々他人よりかはと言ったところ。


妹ちゃんが美術室から顔を覗かせ呼ぶ声に返事をして、ここまでで大丈夫だよありがとうねと肩を叩いて男は背を向けた。


(悩みの種を植え付けるだけ植え付けて行きやがった・・・)