私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「ああ、そうしろ。おやすみ」


「・・・おやすみなさい」


パタパタとスリッパの音を立てて二階へ急いだ。


満足気に笑うあいつの顔なんざ、知るわけなかった。








「はぁー、」


皆を起こさないよう、それでいて急いで自室に戻り閉じたドアに寄りかかるようにして座り込んだ。


ただ水を飲みたかっただけなのに。体育祭なんかよりも疲れたぞ。


このままベッドに向かおうと立ち上がれば壁にかかるコルクボードが目に付いた。


一見、付箋が何枚か貼ってあるだけの何の変哲もないただのコルクボード。


私はそれをひっくり返す。


(きちんと隠していたのは褒めるべきだろうな)





裏返したボードには何枚もの写真が貼られ、中には赤いバッテンで顔を塗りつぶされたものもある。


その中には瀬戸沢 愛と静脈血色の髪色をした男、早川 響の写真があり中央に貼られていた。


男の写真に触れバーでの会話を思い出す。


『疲れちゃったのよ』


『そう、それで誰も私の事を知らない所に行きたかったの』


あの言葉に嘘偽りはない。





だが、その理由が"復讐に"だなんて。伝えられる訳ないんだ。





『計画通り、来年の春には片がつきそう』


そうだ。私には、


「ここで止まってる暇なんざないんだ」


自分に言い聞かせるように呟いた言葉は冷えた自室に溶けていった。