私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

過去を思い出したからか、その瞳に影を落としていた谷垣だったがなにか吹っ切れたようでここ数日で一番の輝かしい笑顔を見せる。


うん、やっぱりお前らには笑っていて欲しいよ。





「お話は終わったかい」


優しい声のする方へ向けば会長がそこには立っていた。


「おばあちゃん?」


「いきなりごめんなさいね、私もその子とお話したくて。こんな老いぼれだけど付き合って頂ける?」


「もちろん。谷垣、皆と先に戻ってて」


私も機会があれば聞きたい事があったから。


「うん、分かった」


谷垣と入れ替わるようにして席に着く会長。予め飲み物を頼んでいたようで私達の前に紅茶が出される。



「会長はあの家を、いえ。私の祖母─────、





綾波 紅葉(あやなみ もみじ)を





ご存知なのですか?」


カップを持ち水面に浮かぶ自分の顔を眺めながら問いを口にした。


ローズヒップティーの色のおかげでやたらと目立つ瞳の色は溶け込んでいる。


言葉にしたのは嫌う人間の一人の名前。


「ふふ会長だなんて堅苦しい呼び名はやめて?美智子って呼んで頂戴?そうねぇ、紅葉ちゃんの事はよく知ってるわよ。あの会場に居た誰よりもね」


あの人をちゃん付けで呼ぶ人間なんて初めて見るな・・・。


そもそも損得無しの友人関係なんて持ち合わせているのだろうか。