私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「分からないなら焦る必要はないよ。今は自分の大切なものを守ることに集中しな。それが希望になるかもしれないしね。あ、疲れたらちゃんと休むんだよ?」


笑顔をこちらに背を向けている皆にも向ける輝久さん。


やっぱりこの人の言葉というのは驚く程にすんなりと入ってくる。まるで心を見透かされているような、そんな気分にさせられる。


いつもそのようにしているんだろうか・・・。


それなら、輝久さんを見習って大切な皆を守らないと。


大人の言葉ばかりに従っていた俺に、輝久さんのこの言葉は一種の目標に近い言葉となった。


皆という存在は、俺の生きる理由となったんだ。


愚直だった俺はその事に満足していた。


あの日、ああやって話してくれた輝久さんが思い詰めていた事にも気付かないで。





輝久さんは俺と同じように悩んでいた。その事に気付かされるのはまだ先の話。