私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

side,龍二


幸せか、幸せじゃないか。


恵まれてるか、恵まれてないか。


そう問われればどちらも前者だと答える。


それでも、


授業参観や運動会で見に来てくれる親、誕生日やクリスマスにお祝いしてもらったのだと喜んで話すクラスメイト。


それらを見る度に羨ましいと感じていた。


人前に出れる教養を身につける歳になるまで誕生日というのはお手伝いさんや朔夜達が祝ってくれた。


ある年、誕生日パーティーを開くからと言われた時には一人ではしゃいでいた。二人もちゃんと俺のこと見てくれてたんだって。


だけど、いざ参加してみれば何を考えているかも分からない大人にひたすら挨拶して回るだけ。


結局家族だけで過ごす事なんて、この日どころか過去に一度だってなかった。





「龍二は落ち着いてるね」


中学に上がり、家を出て朔夜達の住むマンションで生活するようになった時のこと。


今日も皆で朔夜と輝久さんが暮らす部屋にお邪魔していた。


皆がテレビゲームではしゃぐ姿を眺めながらソファで寛いでいたところに輝久さんが隣に座る。


「そう、かな・・・?落ち着いていると言ったら昴とか朔夜もだと思うけど」