私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

なんともまぁ、


「聖人みたいな考えね」


「そんなできた人間じゃないさ」


差し出されたシャンパングラスを受け取り、不思議な色のそれに匂いを嗅いでいれば林檎ジュースだよ。消化に良いんだってと続ける。


炭酸苦手でしょ?とも続けるのだからよく見てるなと感心してしまう。


お互いに喉を潤しながら星空のように輝く街中を見下ろす。


星空を見下ろすなんざ中々味わえる物じゃないよな。





「皆が食べ終わるまで、まだ時間が掛かると思うんだ」


「そうね、優里は並べられてる料理を平らげる勢いだったもの」


「はは、だね。ならさ、ちょっと俺の話に付き合ってよ」


窓に顔を向けながら谷垣を横目に見れば自虐的な笑みを浮かべてこちらを見ていた。


「私なんかでよければ」


「そんな事いわないでよ。君だから聞いてもらいたいんだ」


そのように零す谷垣と顔を正面に向き直し対峙する。





ぽつり、ぽつり、


記憶を引き出すように語るのは心優しい少年の過去。


そして、二年前の春に起きた事件について。


それは彼らが西を憎む理由となる事件。