私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

会長の言葉に会場のあちこちからざわめきの声が聞こえる。


「あの子綾波さんの・・・?」


「確かに赤い目をしている」


「まさかこんなところで・・・!」


思っていたよりもあの家について知る人がこの場に居るんだな・・・。これは予想外だ。


ご両親や神崎さんにも視線を向ければ同じような反応をする。


なら最初から名乗るべきだったか?いや、このような騒ぎになるのであれば是非とも避けたい流れではある。


「ごめんなさいね、大事にしてしまって」


「いえ、とんでもないです。谷垣さんを思っての事ですよね?」


「ふふ、洞察力に優れてるところもあの子にそっくりだわ」


困ったように笑う会長に家柄や財力だけでここまで谷垣という名を大きくしたのではないんだと気付かされる。きっとこの人の人柄が影響しているんだろうな。





「龍二!この方が綾波さんところのお嬢さんだと何故早く言わない!!婚約など考えず、今は友人達との学校生活を優先しなさい!・・・このお嬢さんとは仲良くしておくんだぞっ!」


「えっ、えっ!?」


はっ、損得勘定で動くにしてもここまで清々しいと笑えてくるな。


予想していなかった結果に収まったが、谷垣の婚約や転校の話、私がこいつらともう関わらないという話は解決したようだ。