私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

それなのに序章の決断する場面や中盤の葛藤や過去との対峙、終盤の全てを背負って戦いに挑むというこの曲に込められた一つのドラマを通して誰かに想いを伝えようとしているのが嫌でも感じる。


こんな演奏、自分に向けられたらなんて素敵なプレゼントとなるの・・・?


それがこの曲をえらんだ理由・・・?





鍵盤から指を離しステージ上でお辞儀をする彼女。


演奏が終わってもただ見つめる事しか出来なかった観客はここぞとばかりに拍手を送る。


結果なんて、言うまでもなかった。この観客の食い付きが物語ってるじゃないのよ。


私だって素晴らしいものには敬意を払うべきだと思っている。


それが貴女相手でもね。


ああ、魅せられてしまった。


そう気付かされた時点で私の負けよ。








演奏を終えて皆の元へと戻る。


「ましろ・・・!素敵な演奏だった!」


いつもの如く裏表のない素直さで褒めてくれる谷垣。


「私なりの応援歌ってやつよ」


やれることはしたつもりだ。


これがどう転ぶかはお相手の出方次第なんだが・・・。