私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「やれる事をやるだけよ」


「ましろちゃん・・・、頑張って」


「頑張ってな!」


「うん、応援してる」


「応援しています」


「頑張れ」


「谷垣は?応援してくれないの?」


自分でも意地悪な聞き方だと思う。


「っ、うん。応援してる」


少しだけ顔色の良くなった谷垣を見て笑顔を浮かべる。


私だってこいつらの傍を離れたくないんだ。精一杯やらせてもらうとするさ。





「失礼します、演奏のご準備をお願いいたします」


来賓の言葉を聞きながら一時間ほど時間を潰していたところでボーイに声を掛けられる。


食べかけのマカロンを口に放り込み、一口も口をつけていないシャンパングラスを下げてもらう。


誰だよお祝いごとにはシャンパンっていうのを定着させた奴。


泡が絶え間ない幸せを象徴するだとか、天使の拍手とも呼ばれるからだっけか?あとフランス国王の戴冠式で飲まれた歴史に由来するんだったか。


にしたって勘弁して貰いたい。私達に対してだからかアルコールは入っていないものが出されたが、全員が炭酸を飲めるとは思わないでほしい。





指示された場所へ向かう際、また暗い表情を浮かべる谷垣の背中を押す。


「今日の主役に演奏のプレゼント、なんてのも良いでしょ?」


「っ、ああ。楽しみだ」