私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

それじゃぁ後ほど、と神崎は言い残してこの場を後にする。


露骨な態度に出さないのは流石だな。


「ま、ましろ」


「勝手なことしてごめんなさいね。・・・谷垣を賭けの対象としたことも謝るわ」


道具として見られる事を嫌っていたのに、結局はこのような形でしか時間を稼ぐ事はできないんだ。


「いやいいんだ、俺の為にしてくれた事だっていうのは十分に理解してる。ただましろの方こそいいのか?」


「神崎 詩音と言えば、国外のピアノコンクールでも賞を取っていると聞きますが」


あの自信は実績から来るものだったか。


正直そんな相手に100%勝つ保証なんてない。


でも、負けたら私がこいつらから離れるだけのこと。そんな事で時間を稼げる可能性があるのなら挑まない手はない。


「ましろんが弾けるのは知ってるけど・・・、そんな相手に大丈夫なの?」


家で触れるところを何度か水嶋には見られていたか。と言っても清掃の後に軽く鳴らす程度のもの。心配になるのもよーく分かる。


「綾波なら問題ないだろ」


・・・ああ、そう言えば皇にも見られていたな。


と言ってもきらきら星をワンコーラス弾いただけだというのに信じてくれるのか。