私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「神崎さん」


「フフ、詩音と呼んでくださいな」


その豊満な胸を躊躇いもなく押し付け谷垣の腕に絡まる神崎。家柄が良いのもあってか下品には感じないが、友人や仲間だと言ってくれた人にそのように絡む人間を好ましくは思えない。


「詩音さんはこの婚約に不満はないんですか?」


「不満?ありませんよ。貴方のような容姿も家柄も申し分ない方がお相手なら。貴方の存在は私の価値をより良いものにしてくれるはずでしょうしね」


彼女の放つ言葉に眉をひそめてしまうのは許してほしい。


政略結婚とはいえ、谷垣を尊重してくれる相手ならと思っていたがこの女もあの両親に似た考えをお持ちのようだ。


谷垣を見れば先程よりも暗い表情を浮かべている。


「・・・ねぇ貴女?」


「私ですか?」


見すぎた、のだろうか。まさか彼女から声を掛けられるとは思わなかった。





「貴女の事、見た事がある気がするのよねぇ。私達、どこかでお会いしました?」


「いえ、そんな記憶は」


面識があったのだとすると私が気付かない訳が無い。


神崎グループの娘だから・・・?いや、白百合と言っていたしそれで・・・?


頭を捻る私に神崎は早々に興味を失ったらしい。


「まぁいいわ、ねぇ龍二さん?私この後ピアノを弾かせて頂けることになってるの。その後に私を婚約者として発表する手筈なんですのよ。しっかり聞いていてくださいな」