私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

「詩音さんは神崎グループの一人娘でね。詩音さん自身もあの、白百合女学院に通われている優秀な一人娘なのさ」


白百合女学院と言えば名門校と名高い女子高じゃないか。


「婚約者だなんて、そんなの聞いてないよ」


「そりゃそうよ、この場で発表するつもりだったんだもの。正式な発表はこの後するから皆も他言無用でお願いね」


「婚約者となったからには一緒に過ごせる時間が多い方がいいだろう。神崎さんの住む場所の近くへ龍二が引っ越すというのも手だなぁ!その事についてご両親と話してくるから、また後でな!」


嬉しそうに語るが、そこには谷垣の意思は関係ないのかよ。


態度にこそ出さないがこいつらだって取り繕った笑顔を浮かべる事しかできていない。





谷垣の両親が人混みへと消えて行くのを確認して、私達は気を落ち着かせるために会場の端へと移動していた。


「ごめん、皆。ましろも初対面であんな・・・。気を悪くしただろう?」


「気にしてないわよ、それよりも谷垣の方が大変じゃないの」


「そうだぞ!あんな勝手なことあるか!」


「苦手なところはあったけど、ここまで育ててくれた恩はあるし割り切ってたはずなんだがな・・・。結局のところ道具としか見てもらえないみたいだ」


「龍二・・・」