私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ

我ながらよく口が回るもんだ。


「そうかいそうかい!なら社交界というのをここで学んでいくといい。・・・やるじゃないか」


「・・・」


おーい、耳打ちでも聞こえてるぞ。


見た目は良くたって狸親父を絵に書いたような中身だな。こんな大人ばかりだと考えると谷垣達が不安になるのも分かる気がする。


「親子の話に水を差すようで申し訳ないのですが、龍二さんへのご紹介はまだですの?」


「あらこの人ったら。ごめんなさいねぇ」


この奇妙な空気の中割って出てきたのは顔立ちのいい緑色のタイトなドレスを身にまとった茶髪のウェーブ髪の女。


口調といい容姿といいどこかのご令嬢のようだ。


「すまないね、紹介するよ。こいつがうちの愚息の龍二だ。龍二、こちら神崎 詩音(かんざき しおん)さんだ」


「は、はじめまして?えっと、紹介って?」


「はじめまして、神崎 詩音と申しますわ。本日をもって龍二さんの婚約者となる者ですわ」


「こ、婚約者!?」


おやまぁ。


黙って見てれば驚きの方向へと話が進んで行くではないか。


まさかの展開に私達は戸惑うばかりだ。


一番戸惑ってるのは谷垣本人だが。知らされてなかったんだなこれ。


数分のやり取りだけでこの親の人間性は掴めた。なんでこんな親から谷垣が生まれるんだ?


反面教師ってやつなんだろうが不思議で仕方ない。