「綺麗だな」


「すげぇ・・・」


素直に褒めてくれるこいつらだって、オーダーメイドのスーツなのかスタイルを強調する姿にそれぞれの魅力を引き出すヘアスタイルで周りの人間の足を止めていた。


流したりまとめたり、普段よりも色気というものが出ていて目に悪い。チカチカしてしょうがないんだこいつら。


ちなみに皐月はこのタイミングで動いてもらうべく本日は別行動である。誘われてなきゃ私だって動くつもりだったしな。


特に連絡もないしあちらも進展はないのだろう。





「時間だ。行こうか」


スマホで時間を確認した谷垣に続いて会場へと踏み入れる。


煌びやかな装飾や食事に、無意識に息を呑む。


谷垣は普段の立ち回りなどを見て社交界のマナーもあるだろうと考えたんだろうが、経験はあれど場数を踏んでいるわけではない。


あくまで人並みにはというくらいだ。変に緊張してしまうのは目を瞑って頂きたい。


「こちらをどうぞ」


ボーイから勧められたシャンパングラスを受け取り中央へ進んで行く。


「父さん、母さん」


中央で談笑する男女に声を掛ける谷垣。


いつものような優しい声色じゃないのは、この人達に対して緊張感を抱いているからなのだろうか。