素顔に花と光を

「、、、っ」

声が聞こえた気がして顔を上げる。

吹雪は、なにかを言いかけて、言葉を飲み込んだようだった。

沙里も何かを返したかったけど、何も見つからなくて断念した。

「じゃあ、投稿またみるね」

とだけ言って、教室を出て行った。

沙里は、その背中を眺めるだけだった。

言いかけた言葉、、。

何だったんだろう。

ため息をつきながら、バックにスマホをしまいながら教室を出た。

外は、すっかり夕暮れだった。

沙里は、駅前のスタバで新作のチョコドリンクを買った。

カップの上に乗ったホイップとチョコソースが、写真映えしそうで、スマホを取り出して何枚か撮った。

でも、投稿する手が止まった。

——「じゃあ、投稿またみるね」

吹雪の言葉が、頭の中で繰り返される。

あのとき、彼は何を言いかけたんだろう。

「一緒に行こうか」だったのか。

それとも、もっと違う何かだったのか。

沙里は、スマホの画面を見つめながら、ため息をついた。

写真はきれいに撮れている。

でも、言葉が見つからない。

「これめっちゃかわいい」 「新作おすすめです」 「チョコ好きにはたまらない」 ——どれも、今の気持ちには合わなかった。

画面を閉じて、カップを両手で包む。

歩きながら、ふと空を見上げる。

吹雪の言いかけた言葉。

それが何だったのか、今はまだわからない。

でも、いつか聞ける気がした。

そのとき、ちゃんと答えられるように。

沙里は、もう一度スマホを開いて、投稿画面に戻り、覚悟を決めてボタンを押した。

その瞬間、通知が鳴った。

芹澤吹雪
|おいしそう

思わず笑ってしまった。

一番初めのコメントに、おいしそうの一言だけ。