素顔に花と光を

放課後。

今日も、みんなが帰った後の教室に残った。

一人で過ごすこの時間が、沙里にとっての楽しみだった。

今日こそは、スタバの新作を買いに行きたい。

そう思って、ポーチとスマホを取り出す。

そのときだった。

「あのさ、」 背後から声がした。

びくっと肩を震わせて振り返ると、そこには吹雪が立っていた。

なぜか、彼は笑っていた。

「……なんで笑うの」

沙里は、少しだけ眉を寄せて言った。

「いや、昨日の反応と同じだったから……。ごめん」

吹雪は、笑った。

沈黙が落ちる。

でも、それは気まずさではなく、どこか優しい空気だった。

——吹雪が悪いんじゃない。謝らないでよ。

そう言いたかったけれど、言葉にはできなかった。

「今日も投稿するの?」

吹雪が、沈黙を破ってくれた。

沙里は、必死に答えを探して、「うん」とだけ答えた。

それだけで精一杯だった。

でも、吹雪は待ってくれた。

沙里は、言葉を探して、ようやく声を出す。

「今日は、えっと、あの……スタバの新作を買いに行こうと思って」

その言葉に、吹雪はまた少しだけ笑った。

「いいね。チョコのやつ?抹茶のやつ?」

吹雪は弾んだ声で、質問してきた。

沙里は、驚いた。

こんな質問されると思ってなかった。

「チョコ、、のほうかな」

そう答えると、俺もチョコのほう気になってる、と言って、目を細めて微笑んだ。

え、思わず声が漏れる。

何か、会話は続けたくてとっさに頭に出てきたことをいう。

「チョコのやつ、かわいいから撮りたくて」

その言葉を口にした瞬間、自分でもびっくりした。

そんなこと、普段の自分なら絶対言えない。

「、、じゃあ、、俺も行こうかな、スタバ。」

その言葉に一瞬息を止めた。

でも、一瞬で戻る。

一緒に行こう、と言われたわけではない。

「うん。」

それをこたえるので精いっぱいだった。