素顔に花と光を

沙里は、ふと吹雪のほうを見た。

吹雪はいつも通り、人に囲まれていて、笑い合っている。

だけど、今日の吹雪は、どこか元気がなかった。

いつもなら、冗談を言って、満開の笑顔で笑っているはずなのに——

今日は、不安げな表情が混じっていた。

でも、周りはそんなことに気づかず、いつも通りに盛り上がっている。

しばらく見ていると、吹雪が「ちょっとトイレ」と言って席を外した。

——今なら、話せるかも。

そう思って、沙里はゆっくりと近づいた。

「あ、あの……」

吹雪が顔を上げる。

いつもの笑顔。

でも、目の奥が笑っていない。

「何?」

返事をされたけど、何を話すか考えずに声をかけてしまったから、言葉が出てこなかった。

あたふたしていると、吹雪が口を開いた。

「最近、投稿してないけど……」

——ぎく。

いじめのことは、吹雪には言いたくなかった。

知られたくない。

ばれたくない。

とっさに、出てきた言葉を投げ出す。

「最近、忙しくて……あー、えっと……塾とか!」

しかも、SNSのことを誰かに言ったのかなんて、聞けるわけもない。

吹雪は、何の疑いもなく「そっか」と答えた。

そのあと、ぽつりとつぶやいた。

「俺も、ちゃんとしないといけないのに」

沙里は、何も言えなかった。

その言葉の重さが、胸に沈んだ。

固まっていると、吹雪が小さく「ごめん、なにも、、」と言って、 あっという間に、何も言わず教室を出ていった。