素顔に花と光を

その日は、うきうきした気分で学校に向かった。

昨日の投稿がバズって、フォロワーも増えて、コメントもたくさんついて。

本当の自分の姿を褒められてうれしかった。

でも——

教室に向かう廊下を歩いていると、いつもと違う空気が漂っていた。

重くて、どろどろしている感じ。

廊下の端で、女子たちがひそひそと話している。

「え、あの子なの?」

「そうらしいよ」

「え、全然ちがうじゃん」

「SNSでは気取ってるんだって。ウケる」

……何? 何が起きてるの?

不安を押しきって、いつも通り教室に入った。

でも、空気は変わらなかった。

誰も何も言わないのに、視線だけが刺さる。

もやもやしたまま、昼休みになった。

朝のうきうきは、すっかり消えていた。

気分を切り替えたくて、トイレの洗面台の前に立つ。

リップを塗ろうか迷っていたとき、誰かが入ってくる気配がした。

おもわず、個室に駆け込む。

「学校では全然違うじゃんね」

「てか、あの李姫(りいひ)も言ってたよ。あの子、裏では必死だよって」

「……あ、やっぱり?」

個室の中で、息を殺す。

「え……」と声が漏れそうになるのを、必死にこらえた。

李姫ちゃんも? あのとき、リップを拾ってくれた子。

優しい笑顔で、明るく話しかけてくれたあの子が—— 私のことを、そんなふうに?

あの笑顔も、声も、全部……演技だったの?

悲しくて、今すぐ泣きたかった。

膝を抱えて、スマホを開く。

画面の中は、まだ「かわいい」であふれていた。

そもそも——

私のSNSのこと、誰がばらしたの?

吹雪? ……でも、吹雪がそんなことするはずない。

あの人は、そんな裏切り方しない。

うん、きっと。

じゃあ、誰?

私、誰にも言ってない。

学校では、絶対に出してない。

投稿も、顔は出してないし、名前も違う。

なのに、どうして?

もしかして、また特徴でばれた?

リップの色? こっそりしているネイルの色?

そんな細かいところで、見つけられるの?

——見つけてほしかったはずなのに。 ——今は、見つけられるのが怖い。

沙里は、またスマホを握りしめた。