私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

さて今度は何を飲もうか。・・・マスカットティーなんて珍しいな。


茶葉を入れ機械にセットしお湯を注ぐ。


「わ!」


幼い声と共に足元に衝撃が伝わる。確認すれば小さな男の子が尻餅をついているじゃないか。


「ごめんなさい、大丈夫?」


床に髪がつかないよう気をつけながらしゃがみ怪我はしていないか確認する。お湯はかかっていないようだがこけた拍子にどこか切ったりしていては大変だ。


「ううん!僕こそちゃんと前を見てなくてごめんなさいっ!」


お、おお。なんと礼儀のなっている子なんだ。さぞかし親御さんの教育がいいのだろう。


感心していれば互いの顔を認識した瞬間目を輝かせる少年。


「お姉さん凄く綺麗!僕知ってるよ!お姉さんみたいな人の事をべっぴんさんって言うんだよね?目なんて宝石のルビーみたい!」


「っ、」


無垢な言葉が矢となって刺さる。


ルビーか・・・。私には勿体ない褒め言葉だな。


私自身今すぐにでも抉り出したい程不快なものでしかないのに。


嫌でもあの家の血が流れている事を証明するこの目なんて・・・。




「そんなとこでなにしてんのましろん」


背後から聞こえた水嶋の声ではっとする。


「あ、ああ、この子とぶつかっちゃってね」


角度的に見えなかったのだろう。覗き込むようにして確認する水嶋。