私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

side,龍二


先程の光景を見て、正直酷いなと感じてしまった。


あの先輩が狙ったのは確実に優里ちゃんだ。


ましろが守ってくれなければ受け身も取れず確実に顔に当たっていただろう。女の子の顔を傷つけるなんて悪意しかないじゃないか。




「それはこっちのセリフなんですけどねー」




ましろの堂々とした声にはっとする。


「あら面白いことになりそうね」


「同感です」


その姿を見て理事長と篠宮さんは楽しそうに笑う。


2人を追うように俺もましろに視線を向ける。


ボールを高く上げ、正確に腕を伸ばす。その瞬間、ましろの赤い瞳が光った気がするが気のせいだろうか・・・。


そんな考えを他所に確実にボールは打ち付けられる。





が、





可笑しいのはその威力。


先輩の顔の間際をボールが横切り、体育館の床に到底日常では聞こえないであろう音と共にめり込んでいく。


本気ではないにしろ先程の朔夜と昴の威力どころじゃない。


えーっと、ましろって女の子・・・でいいんだよな?


「え、えぇー!?何、今の音!?」


「あの見た目でなんて威力出てんの!?」


・・・よかった。困惑しているのは俺だけじゃないみたいだ。


「ふふふ、相変わらずねー」


「そうですね。少々威力は下がっているものの、流石です」


篠宮さん、これで威力下がってるって本当ですか・・・?