私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

こうして順番に優里と私の順がやってきてコートに移動する。


「相手バレー部のキャプテン居るらしいよ」


「そんなん勝てなくない?」


同じクラスの子の話し声が聞こえる。確かにやたら上手い人居たな。


相手がサーブを打つのを見守りながら返す姿勢に入る。


その噂の先輩がボールを打つタイミング。にっこり、嫌な笑みを浮かべた。


相手の視線の先は・・・、


「しまっ──、」


理解すると同時に優里の元に駆け寄る。


「へっ?」


優里もそのボールが顔に向かって迫っている事を理解したのだろう。その声が聞こえると同時にボールと優里の顔の間に腕を伸ばしギリギリで返す。





ダンッ、


体育館中に鈍い音が響いた。


「ま、ましろちゃん!?」


「綾波さん大丈夫!?」


優里に同級生の子に審判の先生。色んな人に囲まれる。


「平気です」


勢い余って受け身も取らず床にダイブしてしまったからな。いやいやお恥ずかしい限り。


「優里は?怪我ない?」


「う、うん。ましろちゃんの方こそ大丈夫なの?」


「平気平気。何ともないわ」


ジャージについた汚れを叩き立ち上がる。ボールはどうやら他の子がきちんと返してくれたようだ。