私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「いえ、相変わらずみたいですね」


「ええ、本当に困ったものです」


ヒメを引き離しながら謝罪するこの男は篠宮 洸(しのみや こう)さん。ヒメの世話役で苦労の耐えない人だ。


「あ、この人いつも理事長代理で出てくる人じゃん」


・・・本当にお疲れ様です。


篠宮さんのプチ説教が始まるがヒメには殆ど効果がないようだ。その様子に呆れつつも世話役を長年続けている。


ヒメの左手の薬指にある指輪が光った。


篠宮さんはヒメを恋愛対象として見ていた。今もそうかは分からないが恐らく現在も。彼女には相手がいる事を知って。


それでもヒメとその相手に忠誠を誓っているからこの関係を望んで世話役を買って出ている。


私は昔からこの人のそういった所が好きだ。


自分の感情よりも相手の幸せを望んで行動できる姿勢が。


「ましろは何に出るの?」


「バレーとドッヂボールらしいわ」


「では午前中の種目のみですね。見終わったら仕事再開してくださいね?」


「分かったわよー」



こうしてヒメと篠宮さんを交えながら球技大会は始まった。


まずはじめに男子のバレーボール。


3年生もいる中勝ったのは皇と藤城のいるB組。この2人の息の合った連携も大きいだろうがボールの威力が凄まじかった。後半なんてこのボールを拾うどころか相手は逃げてたもんな。


それで点を取ったレベル。


他のクラスも水嶋、谷垣、瑠璃川のメンバーの誰かを入れればまだ勝負にはなったかもしれないがそれはもう過ぎた話だ。