家にもグランドピアノはあるもののしばらく触れていなかったな・・・。


今週末にでも綺麗にしなければ。


何を弾こうかと考えながら指を動かしていく。
考えずとも記憶に残っているあの音を再現していく。


「Twinkle Twinkle、 little star・・・」


それに合わせて小さく歌詞を口にするが、再現しようにもこの声ではできない。


あの子の声は私よりも高くて伸びのある声なのだから。


「『How I wonder、 what you are・・・』」


どうしたって歌で違いは出てしまうものだな。


そんな事は分かっているものの続けようとすれば扉の方で物音がし手を止める。


「悪い、邪魔したか」


「皇・・・」


いつの間にか昼休みの時間になってしまっていたらしい。それ程までに集中してしまっていたか・・・。


「きらきら星?」


「え、ええ。ごめんなさい勝手に」


「いい。こいつだって誰にも弾いて貰えないままなのは可哀想だ」


皇は優しくその細い手でピアノに触れる。
細く見えてもあの日触れた手は大きかったな・・・。


思い出したくない記憶が鮮明になりそうで払拭するように話題を切り替えようとするが共通の話題なんぞ無いんだが・・・。


「綺麗だった」


頭を悩ませていれば突如としてそんな言葉が落とされる。