目を開けば何も無い真っ暗な空間にしゃがみこむように座っていた。


違和感を感じるのは視界の低さに小さくなった自分の手。どうやらこれは夢で過去の自分になってしまっているらしい。


前にも見たような光景だな・・・。


だが続きはどうしたって思い出せない。


この後どうすればいいかなんて分かるはずもなく視界に映る小さな手を開いては閉じ見つめる。


骨ばった本来の手の面影はないその手だが視界の端に映る袖下には無数の痣が見えた。


(ああそうだ。確かにこんな手だったな)





他人事のように観察していればその上から添えられる自分のそれとは僅かに大きな手。


「おーい、何してんだァ?」


懐かしいその声に勢いよく顔を上げる。


そこには赤い髪を揺らして眩しい笑顔で笑うそいつ。


「ちょっと、私の事置いてく気?」


馬鹿が。置いていったのはお前の方じゃないか。


さらに聞こえたソプラノの声に顔を向ければ弾けるような笑みを浮かべる彼女が。


いつの間にか身体は成長していたようで先程の男は最後に見た姿になり彼女と一緒に腕を引っ張り立ち上げる。


会いたくて仕方がなかった2人に目頭が熱くなる。


「--、---」


愛おしいその名を呼ぶ。


「なんだよォ?」「なーに?」


不思議そうに笑う2人。2人は先に映る暖かな光へと引っ張る。