私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「こ、こいつも同じ目に合わせればいいだろッ!」


支持を仰ぐ子を押し退けて舞と呼ばれた女子生徒はすごい形相でこちらに駆け寄ってくる。


駆け寄ってくるなんて可愛いものじゃないな。その手にはスタンガンだし。


浮気されて勢いのまま刺し殺そうとする、が正しい気がする。




バチッ──!




「っ、」




鈍い音が中庭に響くと同時に私は腕を掴み、その体を地面へ抑え込む。


「な、なんで!?当たっただろうがっ!」


「・・・掠った程度よ。どう?これでもまだ抵抗する気?」


残りの2人に問えば、この子を連れて覚えてろ!なんて捨て台詞を吐きながら慌てて逃げて行く。


今逃げれば許す、なーんて口調だったがこれは見過ごせないしヒメには後で報告だな。


その背中が見えなくなったのを確認して振り返る。


それよりも今はこっちだな・・・。


いつの間にか外壁に背中を預けるようにして座り込んでいた瑠璃川の元へ寄る。


これはただ単に後味が悪いだけだ。


さっきのだって無視したって良かった。それでも先程の光景を目にして無視した後で優里と何事もなく接するなんざしたくなかった。それだけだ。


こいつが隠し通せるなんざ思えないしな。


近くで見れば息は荒く、脂汗が尋常ではない量だ。


震えも止まらない様子だし・・・。


「瑠璃川、そこまで歩ける?」


「・・・ん」


私に悪態をつく元気も無い、と。


「はぁ・・・」


木のそばにあるベンチへ座らせて私はそっとその場を離れた。