私は‪✕‬‪✕‬を知らない I

「そんなに吸ってばかりいると体に悪いですよショウさん」


「んなこと言われて止められるならとっくに止めてるよ」


中性的なその顔を前髪で片側を隠したこの男はキリがいいのかただのサボりなのか、先程まで作業をしていた棚に体を預けこちらを見る。


ようやく見えた顔は泣きぼくろがその甘いフェイスを更に引き立たせているといつ見ても思う。


年齢不詳だし言動からして食えない人だがこの人の情報は信頼している。バーを営みながら情報屋としての顔も持つこの人にはこうして時折情報提供の依頼をしている。


容赦なく金はぶんどってくけど、その情報の正確性や仕事の速さはそれほどの価値がある。


「今回はなんだ?例のましろちゃんについてか?」


「えー、そんな事も分かっちゃうわけ?」


「おめーらの周りでここ最近目立った出来事なんざそれしかねぇだろ」


情報屋舐めんなーと続けながら新しい煙草に火をつけるショウさん。


既に灰皿には1箱分はあるだろうにまだ吸う気かこの人。そりゃ龍二も心配するわ。年々過保護っぷりに磨きがかかってるし。


「けどよ、今回に関しては諦めて帰んな」


「・・・どういう事だよ」


いつの間にか昴が渡していた封筒の中身を確認したかと思えばカウンターに置いて俺らを帰そうとする。


「謝礼としては充分な金額かと思うのですが」


「そういう話じゃねーのよ」